情報機器は、グローバライゼーションの波に乗って、世界中でつながるものでないと受け入れられなくなってきた。その接続の軸となるのがインターネットによるネットワーク基盤であることはいうまでもない。
一方、コンピュータなどをつくっている供給側の経営者は、なるべく多くのことを自分流にやってシェアを拡大し、ビジネス基盤を確かなものにしようとする。こんなやり方を“自前主義”と名づけよう。
過去、自前主義で企業経営することはごく自然であり、とくに製造業にとっては最も効率のよいやり方だった。だから、「大きいことはいいことだ」とだれもが思っていたし、マーケットシェアの拡大が最大の関心事だったのである。
いまでも、ほとんどの会社が自前主義経営であり、マーケットが「世界中でみんなが共通に使えないものは買わない」と言い出しているので、そうなると消費者はどうしても、シェアの大きなものへ向いていくことになる。その結果、数多いコンピュータ供給側の製品や会社はだんだん数が絞られていく。そんな流れを頭に入れて、この10年くらいの間に起こっていることをもう一度見直してみる必要があるようだ。
自前主義、純血主義のリーダーだったIBMは、90年初めにガースナーを社長に迎え入れて大改革を行なった。DECやタンデムはコンパックに吸収された。NECがパソコン路線を変更したことに象徴されると思うのだが、日本オリジナルの情報機器製品群に力強さがなくなったと感じるのは私だけではあるまい。
これらの現象はすべて、「インターネットに接続して世界中どこでも使えるもの」をマーケットが要求し始めたことに起因する。そして、この流れはますます急になってきている。世の中は確実に、インターネットにつなげて情報交換できるものでなければ売れなくなっている。
そんななかで、標準インターフェイスでつなげていこうというグループが出現した。サン・マイクロシステムズは、創設時からその考えを武器にしてきたが、いまやシリコンバレーを中心に自前主義に対抗するもう一つの軸(標準主義といおう)として、米国ばかりでなく全世界を巻き込む激流となってきたのである。
これからは、否が応でも自前主義と標準主義の戦いのなかで各企業が自分の居所を探し、商売していくことになる。米国ではこの激流のなかでベンチャー企業が起こり、従来企業はビジネスモデルを変えている。「IBMの動きを見て商売する」という時代は終わった。常に全体を見渡しながらその流れを読んで、企業を経営していかなければならなくなった。現状肯定型の経営を見直し、変革のビジョンをもつことが必要なのだ。