ウィンテルといえば、いまやカタカナ辞書に「パソコン業界の寡占傾向を表す造語」として載るほど日常的な言葉となってしまった。会社名やグループ名でもないし製品名でもない。1つの「環境」なのである。
そして今、この環境で数多くの企業がビジネスを展開しており、この環境を中心に物事の推移を見ていかないと、業界の流れを読み違えてしまうことがはっきりしている。
さて、業界の「環境」はウィンテルだけではない。ほかに、従来からコンピュータベンダーが市場に出してきたメインフレームやオフコン環境がある。オープンシステムが華やかな昨今とはいえ、まだまだ健在なのだが、これまでの会社単位の見方からプロプラエタリ(独占)環境としてくくって見る方がいいと思っている。
もともと、メインフレーム環境はハード中心に出来上がっていて、ソフト群も古い視点でつくられたものが多く、今後新たな力をもつためには、新しい形のソフトがどんどん開発されなければならない。しかしながら、絶対的な台数が少くな過ぎて、ソフトでビジネスをしようとしても難しい状況だ。したがって、これからはデータベースサーバーのようなニッチ商品になっていくと思う。
もう1つは、Java環境である。Javaについては次の回で少し詳細を述べるが、ある日忽然と現われたものではないことを強調したい。標準技術を用いて、情報システムをネットワーク化しようと考えた戦略ソフトなのであり、オープンシステムのクライアント/サーバー技術と密接に関係している。
「Javaはあくまでもサンの戦略商品で、うまく軌道にのった暁には標準どころかクローズにしてゴッソリ儲けるつもりだ」という議論を耳にするが、これはたいへん間違っている。これだけ強いウィンテル環境のなかで、クローズ戦略を市場は受け入れるだろうか。そんなことをすれば、みんなウィンテル環境へ流れていってしまうだろう。ウィンテル環境に対抗できる唯一の戦略とは、標準環境でしかありえないのだ。個別の経験や、だれが何を言ったなどということで、ことを判断してはならない。いまこそ「見えざる手」を自分自身で見極めなければならないときだ。
こう考えてくると、今まで見慣れてきた企業別マーケットシェアの図が、産業の流れを見るうえでいかに無力かということがわかるだろう。その図は、ある固定概念の上に成り立っているからである。繰り返すが、企業単位でことは運ばないのだ。われわれが日夜働いている社会システムも、その固定概念と対をなしている。問題は固定概念をいかに打破するかなのである。